整形外科とは、運動器を構成する骨・軟骨・筋肉・靭帯・神経などから発生する運動器疾患を治療する診療科目です。
骨折・靱帯損傷を含めた外傷、頚部痛・腰痛・肩痛、膝痛等の関節疾患、腫瘍、先天性疾患など多岐にわたります。

部位別にみる整形外科領域の代表的疾患

〇首の痛み

主に頚椎捻挫、変形性頚椎症、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性脊髄症、頚椎症性神経根症などが原因として挙がります。

頚椎捻挫(寝違え・むち打ち症)
交通事故やスポーツ事故などで頚部に不意に衝撃を受け、頚椎周囲の筋肉や靱帯、神経や血管などの組織に損傷を受けた状態を言います。
首の痛みなどのほか、ひどいときは頭痛、肩こり、吐き気、めまいなどがみられ長年苦しむこともしばしばあります。

変形性頚椎症
頚椎部分の加齢による変化が原因で首の痛みや肩こり、手のしびれや歩行困難になる疾患の総称を、変形性頚椎症と呼びます。

頚椎椎間板ヘルニア
頚椎の骨と骨の間にある椎間板に負荷がかかることで、椎間板の変性が起こり、組織の一部が飛び出す疾患です。
変形性頚椎症と同様、脊髄や神経根の圧迫によりしびれや疼痛・運動障害など様々な症状が出現します。

頚椎症性脊髄症
加齢により椎間板の変性が進み、骨がとげ状に大きくなって骨棘を形成することや、靭帯が厚く硬くなることで、脊柱管にある脊髄が圧迫され、四肢に痛みやしびれ、運動障害を生じる疾患です。

頚椎症性神経根症
加齢により頚椎症(椎間板の膨隆・骨の変形)が変化し、脊髄から分かれて上肢へゆく神経根が圧迫されることが原因で起こります。主に手の痛みやしびれが発生します。

その他疾患
頚肩腕症候群、斜頸、首下がり症候群、後縦靭帯骨化症、黄色靭帯骨化症、化膿性脊椎炎、硬膜外膿瘍、硬膜外血種、椎骨動脈解離・閉塞、環軸関節回旋位固定、頚椎骨折、頚髄損傷等

〇肩の痛み

主に変形性肩関節症、肩関節周囲炎、腱板損傷・断裂、野球肩などが原因として挙がります。
頚椎由来の病気もあります。

変形性肩関節症
肩関節の一部である上腕骨と肩甲骨の軟骨がすり減ることで起こる病気です。骨どうしが直接ぶつかるため、強い痛みが生じ、骨も変形していきます。
原因は骨折や脱臼などの外傷、年齢に伴う骨や軟骨の老化などです。

肩関節周囲炎(肩こり・四十肩・五十肩)
首や背中が緊張するような姿勢や、猫背・前かがみといった不良姿勢が原因となる他、運動不足・骨や椎間板の変性のほか、ストレス、睡眠不足、更年期障害などから発生するものもあります。
首の筋やつけ根、肩た背中にかけて張った、こった、痛いといった症状が起こり、酷い場合は頭痛や吐き気を伴うことがあります。
また棚のものをとる、髪を結ぶといった日常動作で肩に痛みを感じたり、動かないと感じる、夜間痛が起こります。

腱板損傷・断裂
40代以上(発症ピークは60台代)に発生する疾患です。
症状としては、日常動作での痛み、手を挙げる際力が入らない、軋轢音がする、夜間痛などが挙げられます。

野球肩
ボールを投げた際に起きた亜脱臼や腱板損傷をはじめとする外傷により発生する場合と、肩を酷使することによるオーバーユースによって発生する場合があります。
投球動作はワインドアップ期、コッキング期、加速期、リリース減速期、フォロースルー期の5相に大別されそれぞれの期により受傷原因が異なります。
軽症の場合は安静にしていることで治る場合もありますが、損傷の度合いが酷いと治療が必要になります。

その他疾患
肩関節拘縮、肩峰下インピンジメント徴候群、石灰沈着性腱板炎、動揺性肩関節、上腕二頭筋腱炎、胸郭出口症候群、リウマチ性多発筋痛症、心筋梗塞
上腕骨近位端骨折、鎖骨骨折、肩関節脱臼、肩鎖関節脱臼、上腕腕二頭筋腱断裂、上方関節唇損傷等

〇肘の痛み

主に変形性肘関節症、肘内障、上腕骨内側上顆炎、上腕骨外側上顆炎(テニス肘)、肘部管症候などが原因として挙がります。
頚椎由来の病気もあります。

変形性肘関節症
野球やテニスといった肘を酷使するスポーツや肉体労働を行い軟骨がすり減る、または加齢により軟骨が充分に再生されなくなることでなめらかな動きができなくなり痛みが発生する疾患です。

肘内障
幼児の肘関節脱臼のことで、肘が抜けた状態を指します。
腕をまっすぐにしている状態で幼児が大人から衝動的に離れようとした時に、幼児の腕が引っ張られることで生じることがあります。 また、転落したり腕をひねったりすることでも起こります。

上腕骨内側上顆炎
手首を手のひら側に曲げたり、物をもって肘を曲げる力をいれたりする際に肘の内側に鋭い痛みが走ります。
日常生活動作としては、例えばものを握って持ち上げる、タオルや雑巾を手のひら側に絞る、ロープを引っ張る、などの動きで痛みを感じます。
ゴルフのスイング動作で痛みを感じることがあることから、ゴルフ肘という別名で呼ばれることがあります。

上腕骨外側上顆炎
手首を上に起こしたり、指を伸ばしたりするときに肘の外側に鋭い痛みが走ります。
日常生活動作としては、例えばものをつかんで持ち上げる、タオルや雑巾を絞る、ペットボトルの蓋を開ける、キーボードを打つ、草引きをする、などの動きで痛みを感じます。
テニスのバックハンドの動作で痛みを感じることがあることから、テニス肘という別名で呼ばれることがあります。

肘部管症候群(尺骨神経障害)
肘の内側にある尺骨神経が傷むことが原因で発生する疾患です。
小指側にしびれが発生したり、手の細かい動きができなくなるなどの症状が発生します。

その他疾患
野球肘、離断性骨軟骨炎、肘頭滑液包炎
肘頭骨折、橈骨頭骨折、上腕骨顆上骨折、上腕骨内顆骨折、上腕骨外顆骨折等

〇手・手首の痛み

主に手関節炎・周囲炎、手根管症候群、腱鞘炎、ガングリオンなどが原因として挙がります。
頚椎由来の病気もあります。

手関節炎・手関節周囲炎
手関節は橈骨・尺骨・手根骨骨から成り立っており手首の痛みは様々な要因で発生致します。
骨以外に細いスペースに多くの重要な血管・神経・筋肉・靭帯・腱が走行しており専門的な検査をして原因を特定していきます。

手根管症候群
手根管症候群は、手のしびれが発生する疾患の中でも一般的な疾患です。
手根管症候群は親指から薬指まで痺れることで発症する病気です。手首の手のひら側で屈筋支帯という靱帯により正中神経が圧迫されます。
手根管という、手首の部分にある骨と手根靭帯に囲まれた空間を通過する正中神経が、手を酷使するなど何らかの原因で圧迫されることで、指先にしびれが発生します。

腱鞘炎(ばね指・De Quervain病)
全身にみられますが特に手の使い過ぎにより手首・手指の関節に多く痛みが生じる疾患です。手の腱のうち、指を曲げる方向に働くのが屈筋腱、伸ばす方向に働くのが伸筋腱です。
腱は腱鞘というトンネルの中を滑走します。手を使い過ぎると、腱と腱鞘の間で摩擦が起こり、腫れます。
安静にして手を使わなければ腫れはひきますが、使い続けると腫れがひかず、痛みを伴います。

ガングリオン
関節由来の病気ですので全身にみられますが特に手首・手指などの関節に多く、ゼリー状の物質が溜まった腫瘤です。
大半は無症状ですが、外見的に問題がある・不快感がある場合などは、注射器での吸引を行います。

その他の疾患
TFCC損傷、尺骨突き上げ症候群、尺側手根伸筋腱鞘炎、キーンベック病、下垂手、母指CM関節症、へバーデン結節・ブシャール結節
ギヨン管症候群、前骨間神経麻痺・後骨間神経麻痺、デュプイトレン拘縮、手指血流障害、化膿性屈筋腱腱鞘炎、爪周囲炎
橈骨遠位端骨折、中手骨骨折、舟状骨骨折・舟状骨脱臼・舟状骨周囲脱臼、有鉤骨鉤骨折、槌指、腱断裂・腱脱臼・伸筋支帯断裂等

〇腰・殿部の痛み

主に急性腰痛症、変形性腰椎症、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などが原因として挙がります。

急性腰痛症(ぎっくり腰)
何か物を持ち上げようとしたときなどの何気ない動作をしたときなどに発生します。痛みの原因はさまざまで、腰の中の関節や軟骨負荷がかかる、腰を支える筋肉が損傷するといったものが挙げられます。

変形性腰椎症
加齢より、椎間板が傷み、骨の変形(骨棘)が起きたり、それにより痛みが発生する疾患です。
骨の変形の程度も人によって様々で、骨が強く変形していてもほとんど痛みの症状が発生しない場合もあります。

腰椎椎間板ヘルニア
椎背骨の腰部、骨と骨の間にある椎間板に負荷がかかることで、椎間板の変性が起こり、組織の一部が飛び出す疾患です。
腰椎椎間板ヘルニアでは腰や足に激しい痛みやしびれなどの症状が発生します。

腰部脊柱管狭窄症
脊柱管が腰の部分で狭くなる病気です。そのため、腰から下の神経に関連する症状が出てきます。具体的には、腰の痛み、臀部の痛み・しびれ、足の痛み・しびれ、足の筋力低下、歩行障害、排尿障害といった症状です。
歩いていると、足が痛くなったりしびれたりして歩けなくなりますが、しばらく休むとまた歩けるようになるという症状が特徴的です。
排尿障害は頻尿、夜間尿に始まり、残尿感、失禁へと進行していきます。

その他疾患
腰椎椎間板症、腰椎すべり症、腰椎分離症、棘突起インピンジメント症候群、梨状筋症候群、仙腸関節症、仙腸関節炎、リウマチ性多発筋痛症、化膿性脊椎炎、結核性脊椎炎、硬膜外膿瘍、多発性骨髄腫
腰椎圧迫骨折・破裂骨折、腰椎横突起骨折、骨盤骨折、仙尾骨骨折、大動脈解離、尿路結石、内臓疾患による関連痛等

〇股関節・大腿の痛み

主に変形性股関節症、臼蓋形成不全、発育性股関節形成不全などが原因として挙がります。
腰椎由来の病気もあります。

変形性股関節症
変形性股関節症は、先天性股関節脱臼を始めとした障害の後遺症や股関節の軟骨が摩耗・加齢によってすり減ることで発生するもので、特に痛みが強い場合は、人工股関節全置換術などの手術を行います。

臼蓋形成不全
大腿骨頭の臼蓋の形態異常や大腿骨頭の巨大化が原因で、寛骨臼が十分に大腿骨頭を覆うことができていない状態を臼蓋形成不全といいます。
臼蓋形成不全が原因で単位面積の負荷が大きくなり、関節軟骨が少しずつ傷むと股関節痛や変形性股関節症を発症することがあります。

発育性股関節形成不全
周産期に緩みのある乳幼児の股関節が、間違った育児習慣をはじめとした日常の動作によって脱臼・または亜脱臼状態になる疾患です。

その他疾患
股関節周囲炎、特発性大腿骨頭壊死症、単純性股関節炎、化膿性股関節炎、腸腰筋膿瘍、ペルテス病、大腿骨頭すべり症、弾発股、リウマチ性多発筋痛症
大腿骨近位部骨折、大腿骨頭下脆弱性骨折、股関節唇損傷、大腿骨寛骨臼インピンジメント、鼡径部痛症候群、大腿二頭筋・四頭筋損傷

〇膝・下腿の痛み

主に変形性膝関節症、半月板損傷などが原因として挙がります。
腰椎由来の病気もあります。

変形性膝関節症
膝の関節の軟骨が少しずつすり減ることで、歩行時に膝の痛みが出現する疾患です。
歩行時は痛まないが階段で膝が痛くなる、正座ができないなどが初期症状ですが、次第に通常歩行にも支障をきたすことになります。末期になると安静時にも痛みが取れない、変形が目立つなどの症状が現れます。

半月板損傷
半月板は、膝関節の大腿骨と脛骨の間にある三日月形に近いの軟骨のような組織です。これがスポーツや交通事故といった外力が加わったり、加齢によって質が低下した半月に外力が加わって損傷したことを半月板損傷といいます。
痛み、ひっかかり感や膝がまっすぐ伸びないといった症状や、関節内に水が溜まる関節水腫が発生することがあります。またロッキングという断裂した半月板が関節に挟まり膝の曲げ伸ばしが急にできなくなる現象が起こります。

その他疾患
膝関節炎、滑液包炎、前十字・後十字・内側側副・外側側副靭帯断裂、離断性骨軟骨炎、タナ障害、遊離軟骨障害、ベーカー嚢腫、鵞足炎、腸脛靭帯炎、反復性膝蓋骨脱臼、有痛性二分膝蓋骨
オスグット病、ジャンパー膝、くる病・骨軟化症、成長痛、有痛性筋痙攣、化膿性膝関節炎
膝蓋骨骨折、大腿骨顆上骨折、脛骨高原骨折、下腿三頭筋損傷、シンスプリント、疲労骨折
深部静脈血栓症、下腿静脈瘤、閉塞性動脈硬化症、下腿浮腫、リンパ浮腫、コンパートメント症候群、むずむず脚症候群

〇足関節・足の痛み

主に外反母趾、足底腱膜炎、アキレス腱炎などが原因として挙がります。
腰椎由来の病気もあります。

外反母趾
足の親指の付け根の骨が変形し、外側に突き出した状態を外反母趾といいます。親指がくの字に曲がって人差し指の方に向いた形となり、親指の付け根が靴に当たる、親指が人差し指と重なり圧迫され痛みが生じるなどの症状があります。 悪化すると歩行が困難な場合もあります。内反小趾も合併する事があります。

足底腱膜炎
足の裏にある、かかとと指の付け根の間に広がる繊維(足底腱膜)が損傷して痛む状態を足底腱膜炎といいます。
マラソンやハイキング、長時間の立ち仕事で土踏まずに過度な負担がかかり、足底腱膜酷使されることが原因となります。

アキレス腱炎(アキレス腱周囲炎・アキレス腱付着部症)
アキレス腱およびアキレス腱周辺の組織が、長時間の運動(ランニングなど)により付加がかかることで炎症を起こした状態です。主に痛みや腫れが発生するものの、運動を続けるうちに軽減することもよくあります。
ただし、再発しやすい疾患のため、早期に治療を行うことが大切です。

その他疾患
足関節炎、滑液包炎、変形性足関節症、距骨骨軟骨損傷、有痛性外脛骨、足根骨癒合症、足根管症候群、足根洞症候群、母趾種子骨障害、強剛母趾、槌趾、ハンマー趾、鷲趾
扁平足、開帳足、内反足、外反足、モートン神経腫、リスフラン関節障害、胼胝、鶏眼、陥入爪、骨端症(Sever病、ケーラー病、Freiberg病)、マイクロジオディック病
足関節骨折、踵骨骨折、中足骨骨折、疲労骨折、遠位脛腓靭帯・前距腓・踵腓・後距腓・三角・二分靭帯損傷、アキレス腱断裂、腓骨筋腱脱臼等

全身疾患

関節リウマチ
関節リウマチは免疫の異常により、手足をはじめとした関節に腫れや激しい痛みが発生する病気で、進行すると関節が変形するなどの症状が発生します。
他の関節の疾患と異なり、関節を動かさなくても痛みが生じます。
よく症状が発生しやすいのは手足の関節で、左右の関節同時に症状が起こりやすいことも特徴です。
その他にも発熱や疲れやすさ、食欲がないなどの症状が起こり、炎症が肺や血管など全身に広がることもあります。

骨腫瘍
骨軟骨腫、内軟骨腫、類骨骨腫、ランゲルハンス細胞組織球症、単発性骨のう腫、非骨化性線維、線維性骨異形成、骨巨細胞腫、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、癌の骨転移

軟部腫瘍
脂肪腫、血管腫、神経鞘腫、神経線維腫、線維腫、デスモイド、腱鞘巨細胞腫、ガングリオン、粉瘤
脂肪肉腫、未分化多形肉腫